2017.12.15
第2回は、利益相反取引の制限の内容についてです。前回ご紹介した利益相反取引について、法律上設けられている手続的な制限や、取締役が任務を怠った場合の会社に対する損害賠償責任に関する特別なルールについて、ご紹介します。
2 損害賠償責任に関する特別なルール
利益相反取引については、類型的に、取締役の利益のために会社の利益が犠牲にされるおそれがあることから、上記必要な承認を得た場合についても、取締役の会社に対する損害賠償責任に関して、特別なルールが定められています。
すなわち、通常、取締役には経営を行うにあたって裁量が存在することから、取締役が任務を怠ったと認められるためには、一定のハードルが存在すると解されています。
しかし、取締役が利益相反取引によって、会社に対して損害を与えた場合には、利益相反取引を行った取締役や、会社においてその取引を行うことを決定した取締役は、任務を怠ったものと推定されます(会社法423条3項1号2号)。また、取締役会決議において、その利益相反取引を承認する決議に賛成した取締役も、任務を怠ったものと推定されます(会社法423条3項3号)。
さらに、利益相反取引のうち直接取引の場合には、利益相反取引を行った取締役は、自らに責めに帰すべき事由がないことを理由として、損害賠償責任を免れることはできません(会社法428条)。
このように、取締役が、会社に損害を与える利益相反取引を行った場合には、会社に対して損害賠償責任を負ってしまう可能性がありますので、利益相反取引を行う場合には、会社に損害を与えることがないよう、特に注意する必要があります。
次回は、取締役が利益相反取引を行おうとしている、又は行った場合に、他の取締役や株主が行使できる主要な手段について、ご紹介します。
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