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2015.11.01

中国における取引の相手方

 中国企業と取引を開始する際に、その企業のことをどのようにして知ればよいでしょうか。中国企業の名称の特徴と中国企業の登録情報の検索の方法について、ご紹介いたします。中国企業と取引を開始しようとする際には、まずは以下の方法で、企業の情報を検索してみてはいかがでしょうか。

1 中国の企業の名称
 日本においては、同一の本店所在地に同一商号の会社が存在しなければ、設立が認められます(商業登記法27条。なお、以前は同一市区町村において類似商号の会社が存在している場合には、当該商号による設立は認められていませんでしたが、法改正によりこの制限は撤廃されました)。同一住所の本店所在地でなければ、株式会社●●という完全に同じ名称の会社が、何社も存在することが可能です。
 これに対して、中国においては、以下のとおり、企業は、登記主管機関の管轄区域内において、既に登記登録されている同一業種の企業名称と同一の、又は類似する名称を使用することができません。また、原則として、企業の名称には、業種又は営業上の特徴を使用しなければなりません。例えば、貿易会社であれば「●●貿易(上海)有限公司」といった具合です。したがって、ある企業が登記されている登記主管機関の管轄区域内において、完全に同一の名称の他の会社は、存在しないことになります。
[企業名称登記管理規定]
 第6条 企業に対しては、1つの名称の使用のみを認める。企業は、登記主管機関の管轄区域内においては、すでに登記登録されている同一業種の企業名称と同一の、又は類似する名称を使用してはならない。

2 中国の企業情報の検索
日本の会社と取引を開始しようとする場合、法務局において、その会社の商業登記簿を取得すれば、①正式な会社名、②本店所在地、③設立年月日、④目的、⑤資本金、⑥取締役の姓名、⑦代表取締役の姓名、⑧代表取締役の住所、その他の情報を確認することができます。
これに対して、中国の会社と取引をする場合、インターネットで公開されている中国国家工商行政管理総局のウェブサイト(http://gsxt.saic.gov.cn/)から検索することで、日本の商業登記簿と同様の情報を取得することができます。なお、検索結果を表示するためには、中国語での入力が必要で、また簡単な中国語での質問に答える必要があります。
当該ウェブサイトにおいては、①会社の類型(「有限責任会社(外国法人独資)」であることなど)、②正式な会社名、③法定代表者の姓名、④登録資本、⑤設立日、⑥住所、⑦経営期限の始期及び終期、⑧経営範囲、⑨董事の姓名、⑩董事長の姓名などを確認することができます。さらに、日本の商業登記簿には記載されない、⑪株主の情報、⑫行政処罰情報の有無、その他の情報も確認することができます。
仮に、取引を開始しようとする中国企業から受け取った名刺に記載された企業名称を検索しても存在しない場合、実在しない企業名で取引をしようとする人物を信用できるでしょうか。法定代表者として名刺に記載された人物の名称が、当該ウェブサイトでは法定代表者として記載されていない場合、何らかの理由があるかもしれませんので、理由を聞いてみるとよいでしょう。また、開始しようとする取引により、中国企業が当然に行うべきことが、経営範囲に含まれていない場合、中国企業は、実際には、当該行為を行うことができないかもしれません。中国国家工商行政管理総局のウェブサイトから入手できる情報は、取引を開始しようとする中国企業のことを知る手助けとなります。ただし、これらの情報を確認するだけでは十分とは言えませんので、より多くの情報を入手する努力をすべきでしょう。


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