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2015.09.01

中国における仲裁機関の分裂と紛争解決条項の効力

 中国国際商業会議所(中国国際貿易促進委員会)が、中国において、一般的な渉外案件を扱う中国国際経済貿易仲裁委員会(通称CIETAC、以下、「CIETAC」といいます。)を設置していることは、第2回のニュースレターでご紹介しました。今回は、CIETAC上海分会と華南分会の分裂と、CIETAC上海分会又は華南分会による紛争解決を規定している仲裁合意の効力について、ご紹介します。

1 上海分会と華南分会のCIETACからの独立
 CIETAC上海分会及び華南分会(深セン所在)は、2012年、CIETACが仲裁規則の改正を行ったことに反発し、それぞれ、CIETACから独立しました。元上海分会は「上海国際経済貿易仲裁委員会」(別名「上海国際仲裁センター」)に改名し(以下、「SHIAC」といいます。)、元華南分会は「華南国際経済貿易仲裁委員会」(別名「深セン国際仲裁院」)に改名しました(以下、「SCIA」といいます。)。これに対して、CIETACは、新たな上海分会と華南分会を設置しました。 そのため、上海には、①CIETAC上海分会と②SHIAC(元CIETAC上海分会)、深センには、①CIETAC華南分会と②SCIA(元CIETAC華南分会)が、それぞれ併存することとなりました。

2 仲裁合意の効力についての争い
その結果、各種契約においてCIETAC上海分会又は華南分会による紛争解決を規定していた仲裁合意の効力に争いが生じることとなりました。 例えば、以下の紛争解決条項(CIETAC上海分会が薦めていた仲裁条項)を使用して、契約当事者が、CIETACが分裂する前の2011年に契約を締結しており、CIETACが分裂した後の2014年に、契約当事者間に紛争が発生した場合、紛争解決機関は、現在のCIETAC上海分会となるのか、契約当時のCIETAC上海分会であるSHIACとなるのか、それともそもそも仲裁を規定した紛争解決条項自体が無効になるのか、直ちには判断ができません。

3 最高人民法院による解決
この問題を解決するため、最高人民法院は、2015年7月15日、「中国国際経済貿易仲裁委員会及びその元分会等の仲裁機関が行った仲裁判断に関する上海市高級人民法院等からの質問に対する返答」(以下、「司法解釈」といいます。)を公告し、以下のとおり規定しました。すなわち、司法解釈は、CIETAC上海分会又は華南分会による紛争解決を規定している仲裁合意について、仲裁合意の締結時期に分けて、どの仲裁機関が管轄権を有するのかを定め、実務の混乱を防止しました。

<上海分会について>

仲裁合意の締結日 仲裁管轄権(CIETAC上海分会) 仲裁管轄権(SHIAC)
2012年11月30日まで(上海分会の改名前日まで) 管轄権なし(但し、経過規定あり※) 管轄権あり
2012年12月1日~2015年7月15日(上海分会の改名日から司法解釈施行日の前日) 管轄権あり 管轄権なし(但し、経過規定あり※)
2015年7月16日~(司法解釈施行日以降) 管轄権あり

管轄権なし

<華南分会について>

仲裁合意の締結日 仲裁管轄権(CIETAC上海分会) 仲裁管轄権(SHIAC)
2013年4月16日まで(華南分会の改名前日まで) 管轄権なし(但し、経過規定あり※) 管轄権あり
2013年4月17日~2015年7月15日(華南分会の改名日から司法解釈施行日の前日) 管轄権あり 管轄権なし(但し、経過規定あり※)
2015年7月16日~(司法解釈施行日以降) 管轄権あり

管轄権なし

※経過規定は、司法解釈が施行される前に、司法解釈からすると管轄権のない仲裁機関に申し立てられて受理されている場合、当事者が、管轄違いを理由として仲裁判断の効力を争うことができないことなどについて定めています。


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