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2015.08.01

商標が知らない間に出願されていた

 商標は、国毎に登録しなければならないものであるため、日本で商標を登録していても、日本以外の国においては、日本の登録に基づく権利は原則として認められません。今回は日本で登録されている商標や日本において特定の商品を示す有名な名称が、中国において商標登録を出願されていたという事例をご紹介します。いずれの事例も、中国の企業又は個人により中国において出願された商標の登録が、結果として認められず又は無効となったものです。いずれの事例でも、仮に、当該商標が、そのまま中国において登録され、又は維持されていれば、当該商標を付した日本の商品を、中国において販売できなくなっていた可能性がありました。なお、全ての事例において、日本における商品や地域の関係者が、出願に対する異議を行うなど、多大な努力により、中国において当該商標を付した商品を販売できないという事態を回避したことが伺われます。

1 地域ブランド(タオル)
 中国商標局のウェブサイトによると、上海市所在の中国企業が、平成21年12月、地域ブランドタオルの都市名「●●」の商標登録を、①タオル、織物など、②被服など、③広告などの3分野において、中国商標局に対して出願していました。これに対して、その地方自治体(市)とタオル業界団体(組合)が平成23年2月に異議の申請をしていました。
 朝日新聞(平成27年2月10日、大阪地方版/愛媛)によると、平成27年2月、中国企業が出願していた③広告などの分野において登録が認められないこととなり、これにより、上記①から③の分野全てにおいて登録が認められないこととなったことを、地方自治体(市)が発表しました。同記事によると、中国商標評審委員会は、「●●は公衆において一定の知名度を有している」として登録を認めなかったということです。(執筆者注:各種報道などによりますと、①タオル、織物など、②被服などの分野についての商標登録は、それぞれ平成26年中に登録が認められないことが裁定されています。)
 なお、中国商標局のウェブサイトによると、タオル業界団体(組合)は、平成26年10月、「●●タオル」を、タオルなどの分野において、登録を出願しています。

2 地域(産地)ブランド(梅干し)
 中国商標局のウェブサイトによると、広東省東莞市所在の中国企業が、平成18年1月、日本の梅干しの産地名「▲▲」の商標登録を、梅干しなどの分野において、また、広東省広州市所在の中国企業が、平成21年10月、「▲▲」の商標登録を、酒類の分野において、中国商標局に対して出願していました。これに対して、紀伊民報(平成27年7月11日)によると、梅干し業界団体(組合)などが平成20年に、地方自治体(県)が平成22年に行っていた、異議申し立てがいずれも認められたとのことです。同記事によると、異議申し立てが認められた理由は、「県によると、中国商標局は「商品の原産地に誤認を生じさせ、不良な社会的影響を及ぼす恐れがある」と判断した」とのことです。

3 地域(産地)ブランド(磁器)
 中国商標局のウェブサイトによると、福建省に居住する個人が、平成14年11月、「■■焼」(産地名)の商標登録を、花瓶を含む国際分類第21類における特定の商品について、中国商標局に対して出願していました。当該商標は、いったん、平成21年に登録されたものの、平成25年10月に、3年間の不使用により、無効が宣告されました。
 中国における知的財産権の審理においても指摘しましたが、自社の商品を国外において販売する可能性があるのであれば、①国外において、どのような商標が登録されているかという現状を調査すること、②調査の結果を前提として、法的なアドバイスを受けたうえで、既に登録されている商標と類似する表示を使用しないことや早期に国外においても商標を登録することなど、適切な対処を行うことが必要となります。
 中国における登録商標は、インターネットで(中国国家工商行政管理総局商標局ウェブサイト:の「商標査詢」から)検索することができますので、自社の名称や商品名が、中国において商標として既に登録されてしまっていないか、検索してみてはいかがでしょうか。


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