2015.06.01
中国において、知的財産権専門の裁判所が、昨年、北京、上海及び広州に設立されました。知的財産権に関する訴訟が集中的に審理されることによって、判断の統一化が期待できると言われ、注目されています。その制度の概要及び現状等をご紹介します。
2 日本における裁判所との比較
日本においては、2005年から、知的財産高等裁判所が設けられていて約10年間の歴史があります。日本においては、第一審となる東京地方裁判所と大阪地方裁判所に、知的財産関係事件の専門部が設けられており、知的財産関係の事件を、第一審においては東京地裁又は大阪地裁の知財専門部で、第二審においては知財高裁で、集中して審理する体制がとられています。
訴訟期間について、日本においては、お互いに争いがある事件で第一審が6か月間で終了するということはそれほど多くありませんので、一般的には、中国の法院の審理のほうが迅速といえます。迅速に審理することを重視すれば、慎重な審理ができなくなる可能性があるという難しい問題があり、一概に、どちらが良いとは言えません。
3 最新事例及び対策
広州中級人民法院(注:広州知識産権法院ではありません。)は、2015年4月24日、日本でも展開しているグローバル企業であるアメリカの大手メーカーに対して、商標権侵害を理由として、9800万人民元(約18億7000万円)の損害賠償を命じました。なお、本判決は、広州中級人民法院において、過去最高額の損害賠償が認められた知的財産事件とのことです。本判決は、中級人民法院による第一審の判決とのことですので、高級人民法院に上訴することができます(注:判決の内容等は、ウェブサイトで公開されている、南方日報の記事によります。)。なお、この判決は、訴えの提起が、広州知識産権法院が設立される前であるため、広州知識産権法院において審理されず、広州中級人民法院により審理されたものと思われます。
商標や特許は、国毎に登録しなければならないものであるため、例えば、日本で商標を登録していても、日本以外の国においては、日本の登録に基づく商標権は原則として認められません。したがって、自社の商品を国外において販売する可能性があるのであれば、①国外において、どのような商標が登録されているかという現状を調査すること、②調査の結果を前提として、法的なアドバイスを受けたうえで、既に登録されている商標と類似する表示を使用しないことや早期に国外においても商標を登録することなど、適切な対処を行うことが必要となります。
中国における登録商標は、インターネットで(中国国家工商行政管理総局ウェブサイト:の「商標査詢」から)検索することもできますので、自社の名称や商品名が、中国において商標として既に登録されてしまっていないか、検索してみてはいかがでしょうか。
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