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2015.05.01

契約における準拠法の合意

 前回までは①中国における民事訴訟制度、②中国の民事仲裁制度、③契約書における紛争解決条項をご紹介しました。そこで、今回は、日本と中国の国境を跨(また)いで契約を締結する場合に、どちらの国の法律が適用されるかという準拠法の問題について、ご紹介します。

1 契約当事者間の合意
 契約の当事者は、契約を締結するに際して、一定の場合を除いて、その契約にどの国の法律を適用するかを、合意により決めることができます。例えば、日本企業A社と中国企業B社が、売買契約を締結するとします。その際に、A社とB社は、原則として、合意により、その契約にどの国の法律を適用するかを定めることができます。なお、契約における紛争解決条項は、紛争が発生した場合に、どのような方法で解決するか、すなわち、日本の裁判所が管轄権を有するか、中国の裁判所が管轄権を有するか、又は、仲裁で解決するかなどを定めるものです。
 具体的には、準拠法については、契約書において以下のような条項を規定します。
【条項例】
本契約及び本契約に基づく個別契約の有効性、解釈及び履行については、日本法に準拠するものとする。なお、United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods(国際物品売買契約に関する国際連合条約)の適用は排除されるものとする。
(※本準拠法条項例では、日本の国内法を準拠法とするために、なお書きにより、日本及び中国が加盟している「国際物品売買契約に関する国際連合条約」の適用を排除することを明記しています。)
 この条項により、この契約に基づく実体的な権利義務の有無については、原則として、日本法が適用されることになります。なお、この契約の紛争解決条項において、中国における人民法院に合意管轄を定める有効な合意がなされていれば、中国の人民法院が、日本の法律を適用して、実体的な権利義務の有無を判断することになります。
 この点、契約当事者が合意で準拠法を定めることができるものについて、準拠法について合意がない場合に、どの国の法律を適用するかについては、日本においても中国においても法律に定めがあります(日本「法の適用に関する通則法」、中国「渉外民事関係法律適用法」等)。裁判所は、法律に基づいて、どの国の法律が適用されるかを判断することになります。
 しかし、どの国の法律を適用するかは容易に紛争を生じる部分であるため、国を跨(また)いだ契約においては、予め準拠法について合意することをお勧めしております。

2 当事者の合意によっても準拠法を定めることができない場合
 契約の当事者が、契約にどの国の法律を適用するかを、合意により決めることができない一定の場合とは、法律に別途の定めがある場合などです。
 例えば、外国の当事者と中国の当事者が、中国において合弁会社を設立する合弁契約(中外合弁契約)等においては、準拠法を定めることができず、強制的に中国法が適用されることになります(中国「契約法」126条)。また、中国における不動産の物権に関する法律関係は、強制的に不動産所在地の法律が適用されるなど(中国「渉外民事関係法律適用法」36条)、当事者間の合意により準拠法を定められないものが多々存在します。


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