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2015.04.01

中国における民事訴訟制度

 中国における、民事上の紛争の終局的な解決手段には、民事訴訟と仲裁があります。そこで、今回は、中国の民事訴訟制度をご紹介します。

1 裁判所の審級
 中国においては、基層、中級、高級、最高などの人民法院があります(人民法院組織法第2条)。どの人民法院が管轄権を有するかは、事件の訴額の大きさ、重大性、地域、事件の種類、当事者の合意などによります(民事訴訟法第17条以下など)。最高人民法院は、中国の最高裁判機関であり(人民法院組織法第30条第1項)、北京に設置されています。

<日本および中国の裁判所の対応関係>

日本 中国
簡易裁判所 基層人民法院(地方各級人民法院)
地方裁判所 中級人民法院(地方各級人民法院
高等裁判所 高級人民法院(地方各級人民法院)
(なし) 軍事法院等専門人民法院  
最高裁判所 最高人民法院 

 中国の民事訴訟制度は、原則として二審制を採用しているため(民事訴訟法第10条)、判決に不服のある当事者は、 「一級上」の人民法院に上訴することができます(民事訴訟法第164条)。したがって、原則として、判決に不服のある当事者は、第一審が基層人民法院であった場合には、一級上である中級人民法院に上訴することができ、第一審が高級人民法院であった場合には、一級上である最高人民法院に上訴することができます。

<日本および中国の審級制度>

日本 中国
三審制 二審制

2 裁判所での手続の流れ
訴訟手続の流れが、①訴訟提起・被告への送達、②開廷審理、③判決、④上訴、⑤執行である点は、日本の裁判所と 基本的に同様です。

3 裁判に必要となる期間
中国国内の事件については、第一審の訴訟提起から判決までの期間は、原則として6か月程度までとされています。 それは、①人民法院は、規定に合致した訴訟の提起は受理しなければならず、提訴条件に合致する場合には「7日以内に立件し」なければならず(中国民事訴訟法第123条)、また、②人民法院は、原則として、「事件を立件した日から6か月以内に結審しなければならない」(中国民事訴訟法第149条)と定められているためです。また、第二審についても、原則として、第二審の事件を立件した日から3ヶ月以内に審理を終結しなければならないとされています(中国民事訴訟法第176条)。 これに対して、渉外事件の場合には、上記の期間制限を受けません(中国民事訴訟法第270条)。例えば、原告又は被告が日本企業であれば、渉外事件となりますので、様々な原因によって事件の審理が途中で停止し、何年も判決が出されないという場合もあります。

4 日本と中国の民事相互保証
日本企業が、中国で勝訴判決を得たものの、相手方の財産が中国にはなく日本にある場合など、中国の人民法院の判決を、日本において執行したいという場合があります。もちろん、逆に日本の裁判所の判決を、中国において執行したいという場合もあります。しかし、残念ながら、現状、中国の人民法院は、日本の裁判所の判決を承認及び執行しておらず、その結果、日本の裁判所も、中国の人民法院の判決を承認及び執行していない状況です。 すなわち、中国最高人民法院は、平成6年(1994年)6月26日、遼寧省高級人民法院に対して、中国と日本は、相互に 裁判所の判決、決定を承認、執行するとの国際条約を締結しておらず、相互の関係も作り上げられていない旨回答しました。この回答を受けて、大連市中級人民法院は、同年11月5日、中国と日本は、相互に裁判所の判決、決定を承認・執行する国際条約を締結しておらず、またそのような条約に加盟しておらず、両国間には相互の互恵関係も成立していないとし、日本の裁判所の判決を承認 及び執行しないと判断しました。また、大阪高等裁判所は、平成15年4月9日、上記、中国最高人民法院の回答、及び、 大連市中級人民法院の決定などを理由として、「相互の保証」(日本民事訴訟法第118条第4号)の要件を満たさないと判断しました(投資金額確認請求控訴事件、平成14年(ネ)第2481号、平成15年4月9日判決、大阪高等裁判所)。


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