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2015.04.01

中国における民事仲裁制度

 中国における、民事上の紛争の終局的な解決手段には、民事訴訟と仲裁があります。前回は、民事訴訟制度を紹介しましたので、今回は、中国の民事仲裁制度をご紹介します。

1 訴訟と仲裁の違い
 訴訟は、国家の裁判機関が紛争について法律的判断を下して、当事者間の法律関係を確定することによって紛争を解決する制度のことをいいます。これに対し、仲裁とは、当事者の合意に基づき、第三者である仲裁人の判断によってその当事者間の紛争を解決する制度のことをいいます。 したがって、仲裁に付する合意がない場合、終局的な紛争解決は訴訟により図られることになりますので、仲裁によって紛争を解決しようとする場合には、仲裁によって解決する旨の、紛争発生前又は紛争発生後の合意が必要となります(中国仲裁法第4条)。したがって、仲裁に付する合意がない場合、終局的な紛争解決は訴訟により図られることになりますので、仲裁によって紛争を解決しようとする場合には、仲裁によって解決する旨の、紛争発生前又は紛争発生後の合意が必要となります(中国仲裁法第4条)。

2 中国における渉外仲裁機関であるCIETACの概要
中国においては、中国国際商業会議所(中国国際貿易促進委員会)が、一般的な渉外案件を扱う中国国際経済貿易仲裁委員会(通称CIETAC、以下、「CIETAC」といいます。)を設置しています。なお、海事に関する仲裁機関である中国海事仲裁委員会(通称CMAC)も設置されていますが、以下は、CIETACでの仲裁についてご紹介します。 CIETACが取り扱うのは、①「国際的又は渉外的紛争」、②「香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地区に関する紛争」及び③「国内紛争事件」です(CIETAC仲裁規則第3条)。 したがって、CIETACは、中国に進出した日系企業と現地企業の間や、純粋な中国国内の紛争についても、仲裁が可能です。 CIETACにおける仲裁の手続が、①申立・書類の被申立人への送付、②審理、③仲裁判断である点は、裁判における審理と類似していますが、中国の訴訟制度と比較した場合、以下のような相違点があります。

<中国における訴訟制度及びCIETAC仲裁の相違点>

訴訟制度 CIETAC仲裁
裁判官又は仲裁人の選定 当事者は裁判官を選定することができない。 仲裁人を1名とすることの合意等がなければ、仲裁廷は3名の仲裁人で構成される(CIETAC仲裁規則第25条)。仲裁人が3名の場合、申立人及び被申立人は、それぞれ仲裁人名簿から仲裁人を1名ずつ選定することができる(同規則第27条1項)。3人目の仲裁人の決め方は規則に細かく規定されている(同規則第27条2項~4項)。
公開又は非公開 原則として公開(中国民事訴訟法134条) 原則として非公開であり、関係者は秘密を保持する義務を負う(同規則第38条)。
上訴 二審制であり、「一級上」の人民法院へ上訴することができる(中国民事訴訟法第164条)。 上訴できない。仲裁判断は、中国仲裁法第58条に定める取消事由がない限り、終局的なものであり、当事者双方に対して拘束力を有する(同規則第49条9項)。
執行 第一審人民法院又は同法院と同級の被執行財産所在地の人民法院において執行することができる(中国民事訴訟法224条)。 中級人民法院に執行を申立てることができ、中級人民法院は、原則として執行しなければならない(中国民事訴訟法第273条、中国仲裁法第62条)。

3 国を跨(また)いだ仲裁制度の執行について
前回、ご紹介したとおり、現状、中国の人民法院は、日本の裁判所の判決を承認及び執行しておらず、その結果、日本の裁判所も、中国の人民法院の判決を承認及び執行していない状況です。 これに対して、日本及び中国は、外国仲裁判断の承認及び執行に関するニューヨーク条約に加盟しているため、CIETACの判断は、日本の裁判所において承認・執行することが可能となります。また逆に、日本での仲裁判断は同条約の加盟国である中国において承認・執行することが可能となります。

4 国際取引において公平でありまた紛争発生の予防につながる仲裁条項について
状況によって適切な紛争解決条項を規定する必要がありますが、いわゆる被告地主義の仲裁条項をお勧めすることが多くあります。被告地主義の仲裁条項とは、例えば、日本企業と中国企業の契約において、日本企業が仲裁を申し立てる場合には中国において仲裁を申し立てなければならず、中国企業が仲裁を申し立てる場合には日本において仲裁を申し立てなければならないことを定めるものです。 企業にとって、取引の相手方の国において仲裁を申し立てるには、自国で訴訟を提起したり、仲裁の申立てをする場合に比較して、時間も費用も必要となりますので、容易には申し立てることができなくなります。その結果、仲裁の申立て自体が抑制されることになります。また、被告地主義の仲裁条項においては、仲裁判断は取引の相手方の国において出されることになりますので、相手方が有する財産の執行が比較的容易になります。


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