2011.01.05
特定商取引に関する法律(以下「特商法」という)などに基づいて、消費者が契約の撤回や解除を求めてきた場合、事業者は、社内において調査を行い、法律上、明らかに撤回が認められる場合には、契約の撤回または解除に応じるべきでしょう。消費者がクーリングオフ制度によって、契約を撤回または解除することができる場合とその期間は、概ね、以下のとおりです。なお、それぞれの法律において、消費者を保護するために、クーリングオフ期間が設けられているため、個人が事業として契約を締結する場合には、原則として、クーリングオフは適用されません。
販売方法などの種類 | クーリングオフ期間 | 根拠法令 |
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訪問販売 | 契約内容を明らかにする書面を受領してから8日間 但し、不実の告知や威迫によって、撤回が妨害されていた場合には、その妨害がなくなり、契約を解除することができる旨の書面を受領してから8日間 | 特商法9条、5条、48条1項、44条 |
電話勧誘販売 | 同上 | 特商法24条、19条、48条1項、44条 |
マルチ商法 (マルチ商法自体は違法ではありませんが、様々な規制があります。マルチ商法とは、加盟者が次々に他の者を組織に加盟させることによって組織が拡大していくというねずみ講的な販売をいいます(有斐閣「法律用語辞典第3版」)。) | 契約内容を明らかにする書面を受領してから20日間 但し、不実の告知や威迫によって、撤回が妨害されていた場合には、その妨害がなくなり、契約を解除することができる旨の書面を受領してから20日間 | 特商法40条1項、37条2項、40条の2 |
特定継続的役務提供 (エステティックサロン、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚紹介サービスなど) | 契約内容を明らかにする書面を受領してから8日間 但し、不実の告知や威迫によって、撤回が妨害されていた場合には、その妨害がなくなり、契約を解除することができる旨の書面を受領してから8日間 | 特商法48条1項、49条1項 |
業務提供誘引販売取引 (販売されるパソコンとコンピューターソフトを使用して行うホームページ作成の在宅ワーク、購入したチラシを配布する仕事、販売される健康寝具を使用した感想を提供するモニター業務など) | 契約内容を明らかにする書面を受領してから20日間 但し、不実の告知や威迫によって、撤回が妨害されていた場合には、その妨害がなくなり、契約を解除することができる旨の書面を受領してから20日間 | 特商法58条 |
割賦販売、クレジット取引 (二か月以上の期間にわたり、3回以上に分割して受領する場合が割賦販売です。また、購入対象の商品やサービスは、政令において指定されています。) | 契約に関する特定の事項が記載された書面を受領してから8日間 但し、不実の告知や威迫によって、撤回が妨害されていた場合には、その妨害がなくなり、契約を解除することができる旨の書面を受領してから8日間 | 割賦販売法2条、35条の3の10、35条の3の9第3項 |
預託等取引契約(現物まがい商法) (金など比較的高価な商品を売り、それを預かったうえで、一定期間後に利子をつけて返す契約が典型例です。指定商品は政令で指定されています。) | 契約内容などを明らかにする書面を受領してから14日間 | 特定商品等の預託等取引契約に関する法律8条1項、3条2項 |
宅地建物取引 (宅建業者が自ら売主となって、事業所外で行う取引に限ります。) | クーリングオフの権利および行使方法を告知する書面を受領してから8日間 | 宅地建物取引業法37条の2、宅地建物取引業施行規則16条の6 |
ゴルフ会員権契約 | ゴルフ会員権の内容などを告知する書面を受領してから8日間 | ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律12条1項、5条2項 |
保険契約 (保険会社の営業所や事務所で申し込みをした場合や保険期間が1年以下の契約などを除きます。) | 保険契約の申し込みの撤回などに関する事項を記載した書面を受領してから8日間 | 保険業法309条1項 |
海外先物取引 (14日間は、売買指示を受けてはならないという制限であり、他の制度のように〇日間は契約を解除できるという制度ではありません。) | 海外商品取引業者は、海外先物契約を締結した日から14日を経過した日以後でなければ、当該海外先物契約に基づく顧客の売買指示を受けてはならない。 | 海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律8条 |
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