労働者を解雇できるのはどのような場合ですか?2010/2/19

(1)解雇できる場合

解雇には、①業務を遂行する上での能力に問題がある場合などの普通解雇、②人員整理のために行う整理解雇、および③犯罪などを行った場合等の懲戒解雇の三種類があります。いずれの解雇の場合であっても、「客観的に合理的な理由」が存在し、かつ「社会通念上相当」であると認められることが必要です(労働契約法第16条、最判昭50年4月25日小法廷判決〈日本食塩製造事件〉)。

どのような場合に、解雇に「客観的に合理的な理由」が存在し、かつ「社会通念上相当」であるかは、総合的に事情を勘案する必要がありますので、一概に言うことはできません。例えば、単に、業務上の失敗が多いとか、遅刻が多いというだけでは、解雇できるかどうかを判断できません。業務上の失敗や遅刻が業務に支障をきたす程度、職場秩序に与える影響、改善の見込み、その他の事情を総合的に勘案して、解雇が認められるかどうかが判断されます。

また、就業規則や労働契約には、できるだけ明確に労働者を解雇できる場合を定めておくべきです。ただし、形式的には、就業規則や労働契約に定めた解雇できる場合に該当する場合であっても、解雇が認められるためには、上記した、「客観的に合理的な理由」が存在し、かつ「社会通念上相当」であることが必要です。

なお、整理解雇を行うためには、裁判例上、以下の要件を備える必要があるとされています(労働契約法16条、東京高判昭54年10月29日〈東洋酸素事件〉等)。

  • ① 企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づいていること(必要性)
  • ② 労働者を部門の同一または類似の職種に配置転換させる、希望退職を募るなどの解雇をできるだけ回避する経営努力がなされていること(解雇を避ける努力)
  • ③ 解雇対象者の選定(例えば、出勤状況、勤務成績、勤務態度、勤続年数、扶養家族の有無など)が客観的かつ合理的な基準に基づくものであること
    (基準の客観性・合理性)
  • ④ 整理解雇しなければならない事情や経緯などを労働者や労働組合に十分に説明し、協議を尽くしていること(手続の妥当性)

(2)解雇できない場合

解雇に「客観的に合理的な理由」が存在し、かつ「社会通念上相当」であると認められる場合であっても、以下の場合には、解雇することが制限されます
(労基法19条1項)。

  • ① 業務上のケガや病気で労働者が休業している時、およびその後30日間
  • ② 産前産後で休業している時、およびその後30日間