毒入餃子(その1)‐法的責任2009/12/11

2008年1月から2月にかけて、中国から輸入したギョーザ(餃子)で中毒が発生したことが報道されました。かかる事態が発生した場合に、中国から食品を輸入している日本の食品メーカー、卸売会社、又は小売会社等は、どのような法的責任を負うでしょうか。また、かかる事態が発生しないように、又は発生してしまった場合に、日本企業はどのような対策を取るべきでしょうか。本コラムにおいて、3回にわたり検討します。

第1回 発生しうる法的責任

結論

ある日本企業が輸入・販売した食品の欠陥により消費者に健康被害が出た場合、当該企業が輸入者である場合には、製造物責任法に基づく無過失責任を負う可能性があり、また仮にかかる責任を負わない場合でも、債務不履行責任や、被害拡大に関して不法行為責任を負う可能性があります。

また、このような事件が発生した場合、日本の消費者が、かかる製品を輸入又は販売した日本企業やその他の中国産の製品に対して、嫌悪感を持った対応をする可能性があります。

理由

加工食品は、「製造物」(製造物責任法第2条)に当たりますので、当該製品を輸入した企業は、当該食品の「欠陥」によって健康被害を受けた被害者に対して、製造物責任法上の責任を負います。

製造物責任法による責任は、無過失責任であるため、製造物責任法4条の免責事由を証明することが出来ない限り、発生します。そして、加工食品の品質に問題が生じた場合の輸入者の免責事由は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」ですが、加工食品に毒物が混入している場合、技術的に検査できますので、認識が不可能ではありません。また、当該免責事由の趣旨が新技術の開発意欲を削がないためというところにあることからすると、当該免責事由の証明は困難である可能性が高いと考えます。

また、輸入した場合ではなく、販売しただけの場合であっても、債務不履行責任を負ったり、また当該企業が、被害の発生を第一に感知できる立場であるなど、被害の拡大を防止する義務があると認められれば、被害の拡大について過失が認められる場合には、不作為に基づく不法行為責任を負ったりする可能性があります。

また、中国製品が大量に日本に輸入されているため、中国製品が注目されやすい環境にあり、かつ、日中間にはお互いに複雑な感情を有する人が多いため、日本の消費者が、当該製品を輸入したり、販売したりした日本企業、ひいてはその企業が販売する他の製品等に対してまで嫌悪感を有するようになる可能性があることを認識する必要があります。特に、当該食品に企業の名称や商標を付している場合には、特に当該企業の信用への影響は大きくなります。