老人ホーム事業に関係する法規制には、どのようなものがありますか?(第1回)2015/1/22

高齢者人口の増加に伴い、介護業界は拡大傾向にあるといわれていますが、介護事業は、法律的な観点から見ると、様々な法規制が関係する分野でもあります。

そこで本コラムでは、老人ホームを設置、運営するにあたって関係する法規制について、3回にわたって紹介していきます。老人ホーム事業を行うにあたっては、建築基準法や消防法など本コラムで紹介するもの以外にも様々な法規制が関係しますが、本コラムでは特に、老人ホーム事業に特有の法規制について紹介します。  

なお、一般的に「老人ホーム」と呼ばれているもののうち、養護老人ホームや、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームについては、原則として、国、地方公共団体、社会福祉法人しか経営することができません(社会福祉法60条、2条2項3号)。 さしあたり本コラムでは、有料老人ホーム事業に関係する法規制について紹介していきます。

第1回は、老人福祉法についてです。

老人福祉法では、どのような施設が「有料老人ホーム」にあたりますか?
老人福祉法上、「有料老人ホーム」とは、入居人数に関係なく、高齢者を入居させ、介護や食事の提供等のサービス(委託を含む)を行う施設であって、老人福祉施設*や認知症対応型老人共同生活支援事業を行う住居(グループホーム)等ではないもの、とされています(老人福祉法29条1項)。

*老人福祉施設とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター、のことをいいます(老人福祉法5条3項)。

Q 老人福祉法では、有料老人ホームを設置、運営するにあたって、有料老人ホームの設置者にどのような義務等が定められていますか?

A 老人福祉法で定められている有料老人ホームの設置者の義務等のうち、主なものは以下の通りです。

・届出
有料老人ホームを設置しようとする者は、都道府県知事(政令指定都市及び中核市については市長)への届出が義務づけられています(老人福祉法29条1項)。 ただし、サービス付き高齢者向け住宅として登録されている場合には、有料老人ホームとしての届出は不要となります(高齢者の居住の安定確保に関する法律23条)。なお、サービス付き高齢者向け住宅については、次回のコラムで紹介します。

・帳簿の作成、保存
有料老人ホーム事業について帳簿を作成し、2年間保存することが義務づけられています(老人福祉法29条4項、同法施行規則20条の6)。

・重要事項説明書の交付
入居者や入居希望者に対して、有料老人ホームが提供するサービスの内容等について記載した重要事項説明書を交付することが義務づけられています(老人福祉法29条5項、同法施行規則20条の7、20条の8)。

・入居一時金の保全措置(入居一時金を受領する場合)
入居者から一時金を受領する場合には、算定根拠の書面での明示と、返還金に対する保全措置が義務づけられています(老人福祉法29条7項、同法施行規則20条の9、20条の10)。

・都道府県知事による立入検査と改善命令
都道府県知事(政令指定都市及び中核市については市長)は、有料老人ホームに対して、設備や帳簿書類等について立入検査を行うことができ、違反等があった場合には改善命令を行うことができるとされています(老人福祉法第29条9項、11項)。

その他に、各都道府県では、有料老人ホーム設置運営指導指針が定められています。